多くのツアープロから絶大な信頼を集め、「名器」として今なお高い人気を誇るPINGの「i210」アイアン。 その魅力は、なんといってもソフトな打感と優れた操作性にあります。 しかし、i210が持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、ロフト角について正しく理解しておくことが欠かせません。
この記事では、i210アイアンの標準ロフト角はもちろん、飛距離アップを狙える「パワースペックロフト」の詳細、さらには後継モデルとの比較まで、i210のロフト角に関する情報を網羅的に解説します。自分のスイングや目指すゴルフスタイルに合ったセッティングを見つけるためのヒントが満載ですので、ぜひ最後までご覧ください。
PING i210のロフト角を番手別にチェック!
まずは基本となる、i210アイアンの標準的なスペックを見ていきましょう。ロフト角だけでなく、クラブ選びの重要な要素であるライ角やバウンス角も併せて確認することで、i210というアイアンの全体像をより深く理解することができます。
標準ロフト角の一覧表
i210アイアンは、プロや上級者が好む、いわゆる「アスリートモデル」に分類されるクラブです。 そのため、最近の「飛び系」と呼ばれるアイアンと比較すると、ロフト角は全体的に大きめ(寝ている)に設定されています。 これは、飛距離性能だけを追求するのではなく、スピンコントロール性能や弾道の高さを重視した設計思想の表れです。特に7番アイアンで33度という設定は、現在のアイアンの中ではクラシックな部類に入り、番手ごとの飛距離を正確に打ち分けたいゴルファーに適しています。 このロフト設定により、グリーンをデッドに狙える高い操作性を実現しています。
【i210 標準スペック表】
| 番手 | ロフト角 (度) | ライ角 (度) | バウンス角 (度) | 標準クラブ長 (inch) |
|---|---|---|---|---|
| 3I | 19 | 60 | 5 | 39.25 |
| 4I | 22.5 | 60.5 | 6 | 38.75 |
| 5I | 26 | 61 | 7 | 38.25 |
| 6I | 29.5 | 61.5 | 8 | 37.75 |
| 7I | 33 | 62 | 9 | 37.25 |
| 8I | 37 | 62.8 | 10.5 | 36.75 |
| 9I | 41 | 63.5 | 12 | 36.25 |
| PW | 45 | 64.1 | 13 | 35.75 |
| UW | 50 | 64.4 | 13.5 | 35.5 |
※上記は標準仕様の数値です。PINGではフィッティングにより、ライ角などのカスタマイズが可能です。
i210のロフト角の特徴とは?
i210のロフト設定は、番手間の飛距離差が一定になるよう、非常に丁寧に設計されています。 例えば、5番(26度)からPW(45度)までを見ると、番手が下がるにつれてロフト角が3.5度から4度ずつ増えていくのがわかります。 この一貫性のあるロフトピッチが、ゴルファーにとって「計算できる」飛距離の階段を生み出します。
「7番では飛ぶのに8番だと急に飛ばない」といった、番手間の飛距離のばらつきが起こりにくいため、コースマネジメントが格段にしやすくなるのです。 また、ロフトが比較的寝ていることで、ボールが上がりやすく、しっかりとスピンがかかるのも大きな特徴です。
これにより、グリーン上でボールを狙った場所に止めやすくなり、スコアメイクに直結します。 飛距離だけではない、アイアン本来の役割である「狙う」性能を最大限に引き出すための、考え抜かれたロフト設計と言えるでしょう。
ライ角やバウンス角も一緒に確認しよう
アイアンの性能を語る上で、ロフト角と同じくらい重要なのがライ角とバウンス角です。
ライ角とは、クラブを地面に置いたときにシャフトと地面が作る角度のことで、主にボールの打ち出し方向(左右のブレ)に影響を与えます。 PINGの大きな特徴の一つが、このライ角を豊富なバリエーションから選べる「カラーコードシステム」です。i210も例外ではなく、ゴルファー一人ひとりの身長や構え方に合わせて最適なライ角を選択できます。 自分に合わないライ角のクラブを使い続けると、意図しないフックやスライスが出やすくなるため、非常に重要な要素です。
一方、バウンス角は、ソール(クラブの底面)の出っ張り具合を示す角度で、主にクラブヘッドの抜けの良さに関係します。i210は、市販されているアイアンの中でもバウンス角が比較的大きく設計されているのが特徴です。 これにより、多少ダフリ気味にインパクトしてもソールが滑ってミスをカバーしてくれる寛容性を持っています。 初心者から上級者まで、幅広いレベルのゴルファーが恩恵を受けられる設計です。
飛距離アップの選択肢「パワースペックロフト」とは?

「i210の性能は魅力的だけど、もう少し飛距離が欲しい…」と感じるゴルファーのために、PINGは「パワースペックロフト」というカスタムオプションを用意しています。これは、標準ロフトを全体的に立てることで、飛距離性能を向上させるチューニングです。
パワースペックロフトの具体的なロフト設定
パワースペックロフトは、メーカーのカスタムオーダーで選択可能なロフト設定です。標準ロフトよりも各番手のロフトを立てる(数字を小さくする)ことで、ボールの打ち出し角を低くし、スピン量を抑え気味にして飛距離を伸ばすことを目的としています。 i210の場合、具体的には以下のようなロフト設定になります。
【i210 パワースペックロフト表】
| 番手 | 標準ロフト角 (度) | パワースペックロフト角 (度) | 差分 |
|---|---|---|---|
| 5I | 26 | 25 | -1.0 |
| 6I | 29.5 | 28 | -1.5 |
| 7I | 33 | 31.5 | -1.5 |
| 8I | 37 | 35.5 | -1.5 |
| 9I | 41 | 39.5 | -1.5 |
| PW | 45 | 44 | -1.0 |
※番手によって調整幅が異なります。これは、番手間の飛距離の階段を適切に保つための設計です。
例えば7番アイアンでは、標準の33度から31.5度へと1.5度ロフトが立ちます。 これにより、おおよそ半番手から1番手近い飛距離アップが期待できます。 現代の標準的なロフト設定に近づくため、他のアイアンからの買い替えでも違和感を覚えにくいかもしれません。
パワースペックロフトのメリット・デメリット
パワースペックロフトを選択することには、明確なメリットと、理解しておくべきデメリットが存在します。
メリット:
- 飛距離の向上: 最大のメリットは、やはり飛距離が伸びることです。同じ番手でもより遠くへ飛ばせるため、セカンドショットで持つクラブの番手を上げることができ、ゴルフを有利に進められます。
- 弾道の強さ: ロフトが立つことで弾道がやや低く、強くなります。これにより、風に負けない力強いボールが打ちやすくなる傾向があります。
デメリット:
- ボールが上がりにくくなる可能性: ロフトを立てるため、標準スペックに比べてボールの打ち出し角が低くなります。ヘッドスピードが不足しているゴルファーの場合、十分な高さを出せず、かえって飛距離をロスしたり、グリーンでボールが止まりにくくなったりする可能性があります。
- スピン量の減少: 一般的にロフトが立つとバックスピンの量は減少します。i210はもともとスピン性能に優れたアイアンですが、標準スペックほどのスピンは期待できなくなるかもしれません。
- 番手間の距離の調整: パワースペックにすると、ウェッジとのロフトのつながりを再確認する必要があります。PWが44度になるため、その下のウェッジ(UWやSW)とのロフト差が開きすぎないようにセッティングを調整する必要が出てくるでしょう。
どんなゴルファーにおすすめ?
パワースペックロフトは、以下のようなゴルファーにおすすめの選択肢と言えます。
- ある程度のヘッドスピードがあり、高弾道を打てるゴルファー
もともとボールを高く上げられるパワーがあれば、ロフトを立てても適正な高さを維持しやすく、飛距離アップの恩恵を最大限に享受できます。 - i210の打感や操作性は好きだが、飛距離にもう少しプラスアルファが欲しい方
i210の優れた基本性能はそのままに、飛距離というスパイスを加えたい場合に最適なカスタムです。 - 最近の飛び系アイアンからの買い替えを検討している方
飛び系アイアンのロフト角に慣れているゴルファーにとって、パワースペックロフトは飛距離のギャップを埋め、スムーズな移行を助けてくれます。
一方で、ヘッドスピードが比較的ゆっくりな方や、ボールが上がりにくいことに悩んでいる方は、無理にパワースペックを選ばず、標準ロフトで高さを出してキャリーで飛ばす方が良い結果につながる可能性が高いです。
i210のロフト角と他のPINGアイアンを比較
i210のロフト角をより深く理解するために、他のPINGアイアン、特に人気の後継モデルや性格の異なるモデルと比較してみましょう。これにより、i210がどのような位置づけのアイアンなのかが明確になります。
後継モデル「i230」との比較
i210の正統後継モデルとして登場したのが「i230」アイアンです。 多くのプロがi210からi230へスムーズに移行したことからも、その完成度の高さがうかがえます。 スペック面で最も注目すべき点は、ロフト角の設定がi210と全く同じであることです。
| 番手 | i210 ロフト角 (度) | i230 ロフト角 (度) |
|---|---|---|
| 5I | 26 | 26 |
| 7I | 33 | 33 |
| PW | 45 | 45 |
ロフト角に変更がないため、i210からi230に買い替えても、番手ごとの飛距離はほとんど変わりません。 では、何が進化したのでしょうか。i230は、バックフェースに搭載されたエラストマー・インサートの構造を見直すことで、i210よりもさらにソフトで心地よい打感を実現しています。 また、フェースの溝(グルーヴ)の本数を増やした「マイクロマックス・グルーヴ」を採用し、ラフやウェットな状況でもスピン量が安定しやすくなっているのが大きな違いです。 つまり、i230はi210の優れたロフト設計を継承しつつ、打感とスピンの安定性をさらに向上させたモデルと言えます。
名器「i200」との比較
i210の先代モデルにあたるのが「i200」アイアンです。このi200もまた、ツアーで高い評価を得た名器として知られています。ロフト角の設定は、i210とi200で基本的に同じです。
| 番手 | i200 ロフト角 (度) | i210 ロフト角 (度) |
|---|---|---|
| 5I | 26 | 26 |
| 7I | 33 | 33 |
| PW | 45 | 45 |
i210は、i200で好評だった基本設計を踏襲しつつ、打感を向上させるための改良が加えられました。具体的には、ヘッド内部に充填されている衝撃吸収材「エラストマーCTP」を約30%大型化。 これにより、インパクト時の振動を極限まで抑え、i200を超えるソフトな打感を実現しました。 フェースのたわみも大きくなり、初速性能もわずかに向上しています。 ロフト角は同じでも、打感の柔らかさやミスヒットへの強さという点で、i210はi200から着実な進化を遂げているのです。
やさしさ重視の「Gシリーズ」との違い
操作性重視の「iシリーズ」に対して、PINGには寛容性(やさしさ)を重視した「Gシリーズ」というもう一つの柱があります。ここでは、i210と同時期に人気を博した「G410」アイアンのロフト角と比較してみましょう。
| 番手 | i210 ロフト角 (度) | G410 ロフト角 (度) |
|---|---|---|
| 5I | 26 | 23.5 |
| 7I | 33 | 30 |
| PW | 45 | 44.5 |
表を見れば一目瞭然ですが、G410はi210に比べて大幅にロフトが立った「ストロングロフト設計」になっています。7番アイアンで3度もの差があり、これはほぼ1番手分に相当します。Gシリーズは、ヘッドサイズが大きく、重心が低く深い設計になっており、ミスヒットに強く、ボールを楽に上げて飛ばすことをコンセプトにしています。そのため、ロフトを立ててもボールが上がりやすいのです。一方で、i210はよりコンパクトなヘッドで、弾道をコントロールしたり、スピンをかけたりといった操作性を重視しています。 このように、同じPINGのアイアンでもシリーズによって設計思想とロフト設定が大きく異なることを理解しておくことが重要です。
なぜロフト角の理解が重要なのか?
ここまでi210の具体的なロフト角について解説してきましたが、そもそもなぜロフト角を理解することがゴルフにおいてそれほど重要なのでしょうか。その理由を3つのポイントから解説します。
ロフト角と飛距離の関係性
ロフト角がゴルフクラブの性能に与える最も大きな影響は、飛距離です。 基本的に、ロフト角が小さい(立っている)ほど、ボールは低く打ち出され、スピン量が少なくなり、結果として飛距離が出やすくなります。逆に、ロフト角が大きい(寝ている)ほど、ボールは高く打ち出され、スピン量が多くなり、飛距離は落ちる傾向にあります。 この関係性はアイアンセットの基本であり、3番、4番といったロングアイアンはロフトが立っていて遠くに飛ばすためのクラブ、9番やPWといったショートアイアンはロフトが寝ていて短い距離を正確に狙うためのクラブ、という役割分担が成り立っています。ロフト角が1度変わると、飛距離は約3〜5ヤード変化すると言われており、自分のアイアンセットのロフト角を把握することは、各番手で何ヤード飛ぶのかという「距離感」を養う第一歩となります。
ロフト角と弾道の高さの関係
次に重要なのが、弾道の高さとの関係です。前述の通り、ロフト角が大きい(寝ている)ほど、ボールは高く上がりやすくなります。 高い弾道は、いくつかのメリットをもたらします。まず、ハザード(池やバンカー)を越えやすくなります。また、グリーンを狙うショットにおいては、ボールが高い位置から落下することで、スピンと合わせてランを少なくし、狙った場所に止めやすくなります。これが「グリーンをキャリーで狙う」ということです。
i210のようなロフトが比較的寝ているアイアンは、この高い弾道でグリーンを攻略しやすいという特徴を持っています。 逆に、ロフトが立ったアイアンは弾道が低くなりやすいため、アゲンストの風に強いというメリットがありますが、ボールが十分に上がらないとキャリーが出ず、グリーンで止まりにくいという側面も持っています。
番手間の飛距離の階段を整える
アイアンセットは、各番手がそれぞれ異なる距離を打てるように設計されています。理想的なのは、5番、6番、7番…と番手を下げるごとに、例えば10〜15ヤードずつ、きれいに飛距離が落ちていく状態です。 この「飛距離の階段」が整っていると、ピンまでの残り距離に対して、迷いなくクラブを選択することができます。
しかし、何らかの理由でロフト角にばらつきがあると、この階段が崩れてしまいます。 例えば、「6番と7番の飛距離があまり変わらない」とか、「8番と9番の差が大きすぎる」といった現象が起こります。これは、長年の使用による変形や、個体差によって起こりうることです。 定期的にロフト角をチェックし、必要であれば調整(ロフト調整)を行うことで、番手間の飛距離フローを最適化し、より信頼性の高いアイアンセットにすることができるのです。
自分に合ったロフト角を見つけるには?
ここまでi210のロフト角について様々な角度から解説してきましたが、最終的に重要なのは「自分にとって最適なロフト角は何か?」ということです。そのための具体的な方法と注意点についてご紹介します。
PINGのフィッティングを活用しよう
自分に合ったスペックを見つける最も確実で効率的な方法は、メーカーによる専門的なフィッティングを受けることです。PINGは、ゴルフ業界におけるフィッティングのパイオニアであり、全国の認定フィッター在籍店やフィッティングスタジオで、質の高いサービスを提供しています。 フィッティングでは、専門のフィッターがあなたのスイングを弾道測定器で分析し、ヘッドスピード、打ち出し角、スピン量といった客観的なデータに基づいて、最適なクラブスペックを提案してくれます。
もちろん、ロフト角についても、標準スペックが良いのか、パワースペックが良いのか、あるいはさらに細かな調整が必要なのかを判断してくれます。自己流で判断するよりも、はるかに高い精度で「自分だけの一本」を見つけることができるでしょう。
ロフト角・ライ角調整の重要性
ゴルフクラブは、特に軟鉄鍛造アイアンなどは使用しているうちに地面との衝突などでロフト角やライ角が少しずつ変化してしまうことがあります。 i210は431ステンレススチールという素材ですが、調整が可能なクラブです。 たとえ0.5度でもずれてしまうと、飛距離や方向性に微妙な影響を与え、それがスコアに響いてくることも少なくありません。 「最近、特定の番手だけ距離感が合わない」「なぜかショートアイアンが左に飛ぶ」といった悩みがある場合、それはスイングの問題だけでなく、クラブのスペックがずれている可能性も考えられます。
信頼できるゴルフ工房などにクラブを持ち込み、定期的にロフト角とライ角を測定・調整してもらうことは、クラブの性能を常に最高の状態に保つための重要なメンテナンスです。 多くの工房では1本あたり数百円から調整が可能なので、ぜひ一度検討してみてください。
中古で購入する際の注意点
i210は2018年発売のモデルで、中古市場でも非常に人気が高く、多くのクラブが出回っています。 中古で購入する際には、いくつか注意すべき点があります。まず、そのクラブが標準ロフトなのか、パワースペックロフトなのかを確認することが重要です。前述の通り、両者には明確な性能差があります。また、前の所有者がカスタムオーダーをしていたり、工房でロフト角やライ角を調整している可能性もあります。
見ただけでは判断が難しい場合も多いため、購入する店舗のスタッフにスペックについて詳しく確認することをおすすめします。もし可能であれば、購入前に試打をさせてもらい、自分の弾道や飛距離とスペックが合っているかを確認するのが最も確実です。購入後に「思っていたのと違う」とならないよう、慎重に選びましょう。
まとめ:i210のロフト角を理解してベストなセッティングを

この記事では、名器として名高いPING i210アイアンのロフト角について、標準スペックからパワースペック、他モデルとの比較まで詳しく解説してきました。
i210の標準ロフト(7番で33度)は、飛距離よりもコントロール性能とスピン性能を重視した伝統的な設定です。 これにより、番手ごとの正確な距離の打ち分けが可能となり、グリーンをデッドに狙うゴルフがしやすくなります。 一方で、もう少し飛距離が欲しいゴルファーのために、ロフトを立てた「パワースペックロフト」という選択肢も用意されています。
ロフト角は、飛距離、弾道の高さ、そして番手間の距離の階段を決定づける非常に重要な要素です。 i210の持つポテンシャルを最大限に引き出すためには、ご自身のスイングタイプや目指すゴルフスタイルに合わせて、最適なロフト角を選ぶことが不可欠です。ぜひこの記事を参考に、PINGのフィッティングなども活用しながら、あなたにとって最高のパートナーとなるi210のセッティングを見つけてください。



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