ゴルフのスコアメイクにおいて、パッティングは非常に重要な要素です。近年、プロ・アマ問わず再び注目を集めているのが「長尺パター」です。一般的なパターよりもシャフトが長く、独特なスタイルで打つこの道具は、パッティングに悩む多くのゴルファーにとっての選択肢となっています。
しかし、長尺パターはただ持てば良いというわけではありません。特有の構え方や、アンカリング規制(体に固定することの禁止)に対応した打ち方を理解する必要があります。この記事では、長尺パターの打ち方の基本から、ルールの注意点、安定したストロークを身につけるための練習法まで詳しく解説します。
長尺パターを使いこなすことができれば、ショートパットの不安が解消され、グリーン上での自信を取り戻せるはずです。正しい知識を身につけて、ベストスコア更新を目指しましょう。
長尺パターの打ち方の基本と選ばれる理由

長尺パターの打ち方を学ぶ前に、なぜこのパターが多くのゴルファーに支持されているのか、その理由と特徴を整理しておきましょう。通常のパターとは構造が大きく異なるため、まずはその特性を理解することが上達への第一歩となります。
長尺パターとは?中尺パターとの違い
長尺パターとは、一般的に45インチから50インチ程度の長さを持つパターを指します。通常のパターが33〜35インチ程度であることを考えると、その長さが際立っています。一方、中尺パターは38〜42インチ程度の長さで、主にお腹のあたりで固定して打つスタイル(現在は非推奨)で広まりました。
長尺パターの最大の特徴は、その長さゆえに「直立に近い姿勢」で構えられる点です。前傾姿勢が浅くなるため、視界が広くなり、ラインを立体的に捉えやすくなるというメリットがあります。また、クラブ自体の重量が重いため、手先の余計な動きを抑え、振り子のような安定したストロークを実現しやすい設計になっています。
中尺パターとの大きな違いは、支点の位置です。中尺はお腹付近に支点が来ることが多いのに対し、長尺パターは胸元や顎の下あたりに支点を持ってくるスタイルが一般的です。この高い位置に支点があることで、より大きな円弧を描くストロークが可能になり、ロングパットの距離感も出しやすくなります。
腰への負担が少なく、安定したストロークが可能
多くのゴルファーが長尺パターに切り替える大きな理由の一つが、体への負担軽減です。通常のパターでは深い前傾姿勢を維持する必要があり、これが腰痛の原因になることがあります。しかし、長尺パターは立ったままに近い状態で構えられるため、腰にかかるストレスが劇的に軽減されます。
体への負担が減ることで、ラウンドの終盤まで集中力を維持しやすくなります。腰に痛みや違和感があると、どうしてもストローク中に体が動いてしまい、ミスヒットに繋がりやすくなります。長尺パターによるリラックスしたアドレスは、スムーズな肩の回転を促し、結果としてボールの転がりが安定します。
また、クラブ重量が重いため、風の影響を受けにくいという利点もあります。強風の日でもヘッドがふらつきにくく、狙ったラインにボールを打ち出しやすくなります。このように、物理的な安定性と身体的な楽さが組み合わさっているのが、長尺パターの大きな強みと言えるでしょう。
イップス対策に効果的と言われる理由
パッティングにおける「イップス」とは、精神的なプレッシャーなどにより、手がスムーズに動かなくなる状態を指します。特に1メートル程度の短いパットで手が震えたり、急に強く打ってしまったりする症状に悩むゴルファーは少なくありません。長尺パターは、このイップスを克服するための有効な手段とされています。
イップスの原因の多くは、手首の小筋肉が過剰に反応してしまうことにあります。長尺パターの打ち方では、片方の手を支点として固定し、もう片方の手で振り子を動かすように操作します。この動作は、手首をほとんど使わず、肩の大きな筋肉を使ってストロークするため、小筋肉の暴走を防ぐことができるのです。
さらに、通常のパターとは全く異なる握り方(グリップ)や構え方を採用することで、脳に染み付いた「悪いイメージ」をリセットする効果も期待できます。過去の失敗体験がフラッシュバックしやすい通常のパッティングスタイルから離れることで、精神的な安定を取り戻し、自信を持ってパットに臨めるようになります。
長尺パターを正しく扱うための構え方とスタンス

長尺パターの打ち方において、最も重要なのがアドレス(構え方)です。通常のパターと同じ感覚で構えてしまうと、長尺パター本来の性能を引き出すことができません。ここでは、安定したストロークを生むための理想的な姿勢について解説します。
背筋を伸ばして直立に近い姿勢で構える
長尺パターを構える際の基本は、「背筋を真っ直ぐに伸ばし、軽く膝を曲げるだけの直立に近い姿勢」をとることです。通常のパターのように腰から深く折り曲げる必要はありません。リラックスして立ち、パターを自分の体の中心、または少し左側にセットします。
この時、両肩のラインがターゲットライン(打ち出したい方向)と並行になっていることを確認してください。背筋が伸びていることで、呼吸が深くなり、プレッシャーがかかる場面でもリラックスしやすくなります。また、顔の向きも地面に対して垂直に近い角度になるため、両目でラインを捉えやすくなります。
注意点としては、直立しすぎて体が後ろに反り返らないようにすることです。重心は足の裏の全体(土踏まず付近)にかかるようにし、どっしりと構えます。この安定した土台があってこそ、長いシャフトを正確にコントロールする準備が整います。
ボールの位置と目のラインの合わせ方
ボールの位置は、通常のパターよりも「やや左足寄り」に置くのが一般的です。これは長尺パターが大きな円弧を描くストロークになるため、ヘッドが最下点を過ぎて、ややアッパーブロー(上向きの軌道)でボールを捉えるのが理想的だからです。これにより、ボールに順回転がかかりやすくなり、転がりの良いパットになります。
また、目の真下にボールが来るように構えることも重要です。鏡などを使って、自分の目がボールのラインの真上にあるか、あるいはわずかに内側にあるかを確認しましょう。目の位置がボールよりも外側(体から遠い側)に出てしまうと、カット軌道(外側から内側へ振る動き)になりやすく、方向性が不安定になります。
長尺パターは視点が高いため、距離感の錯覚が起きやすいという側面もあります。そのため、毎回同じ目の位置、同じボールの位置で構えるルーティンを確立することが、再現性を高めるためのポイントになります。
安定感を高めるためのスタンス幅のポイント
スタンス(足の幅)は、肩幅程度、あるいは肩幅より少し広めにとることをお勧めします。長尺パターはクラブ全体が重く、ストローク中に遠心力が強く働くため、足元をしっかり固めておかないと体が左右に揺さぶられてしまいます。特にロングパットでは振り幅が大きくなるため、広いスタンスが安定感を生みます。
つま先の向きは、少し開く「逆ハの字」にしても、真っ直ぐに揃えても構いません。自分が最も下半身を固定しやすいと感じる向きを探してみてください。重要なのは、「ストローク中に膝や腰が動かないこと」です。下半身を不動の土台とすることで、上半身の振り子運動がより正確になります。
また、体重配分は左右均等(5:5)か、やや左足に多く(6:4程度)乗せるのが良いでしょう。左足に少し体重を乗せておくことで、ストローク中の軸ブレを防ぎ、安定したインパクトを迎えることができます。
長尺パターのアドレスチェックリスト
・背筋を伸ばし、リラックスして立っているか
・ボールの位置は左目の真下付近にあるか
・スタンスを広めに取り、下半身が安定しているか
長尺パターの理想的な握り方と手の役割

長尺パターの打ち方で次に重要となるのが、グリップ(握り方)です。左右の手が果たす役割は、通常のパターとは明確に異なります。それぞれの役割を理解することで、スムーズなストロークが可能になります。
左手(上の手)の役割と固定のコツ
長尺パターにおいて、左手(右打ちの場合。グリップの上側を持つ手)の役割は「支点」を作ることです。この手が動いてしまうと、パターの軌道がバラバラになってしまいます。かつては胸や顎にグリップエンドを押し当てる「アンカリング」が行われていましたが、現在はルールで禁止されているため、体に触れさせずに固定する必要があります。
左手は、親指をグリップの真上に乗せるようにして、しっかりと握ります。左肘を少し外側に張り出すようにして固定すると、腕とパターが一体化しやすくなります。このとき、左手はストローク中に一切動かさず、あくまでコンパスの針のような役割に徹することが重要です。
固定のコツは、左脇を軽く締めるイメージを持つことです。完全に締め付ける必要はありませんが、腕が体から離れすぎないようにすることで、空間での支点が安定します。自分にとって最もグラつかない「空中の支点」を見つけることが、長尺パター上達の鍵となります。
右手(下の手)の添え方とクロウグリップの活用
右手(グリップの下側を持つ手)の役割は、振り子を動かすための「動力」です。ここで重要なのは、右手に力を入れすぎないことです。力んでしまうと、せっかくの振り子運動が乱れ、スムーズなヘッドの動きが阻害されてしまいます。
多くの長尺パターユーザーに採用されているのが「クロウグリップ(爪のような握り方)」です。右手の平を自分の方に向け、鉛筆を持つような形で親指と人差し指、中指で軽くシャフトを挟みます。この握り方は手首の自由度を抑える効果があり、パンチが入ったり(急加速)、緩んだりするミスを防ぐことができます。
また、順手(通常の握り方)で添える場合でも、指先で軽く触れる程度の感覚を大切にしてください。右手はあくまでパターヘッドを後ろに押し、前に導くための「ガイド」であるという意識を持つと、重力に従ったナチュラルなストロークになります。
左右の手の間隔をどのくらい空けるべきか
長尺パターにおける左右の手の間隔は、自分の感覚に合わせて調整が必要ですが、一般的には「20センチから30センチ程度」離すことが多いです。手が近すぎると通常のパターに近い動きになり、長尺のメリットである安定した大きな振り子が作りにくくなります。
逆に手が離れすぎると、右手の操作が強くなりすぎてしまい、支点である左手との連動性が失われる可能性があります。練習グリーンで、間隔を少しずつ変えながら打ってみて、最もヘッドを真っ直ぐ、かつスムーズに動かせる距離を探してみましょう。
手の間隔を決める際の目安は、構えたときに右肘が軽く曲がり、リラックスした状態でヘッドを操作できる位置です。自分なりの「黄金比」が見つかれば、距離感のコントロールも飛躍的に向上します。
グリップの形は人それぞれですが、共通して言えるのは「上の手は固定、下の手は添えるだけ」という役割分担です。このバランスが崩れると、長尺パターの精度は落ちてしまいます。
アンカリング規制に対応した合法的なストローク法

2016年のルール改正により、パターを体に固定する「アンカリング」が禁止されました。長尺パターの打ち方においても、このルールを遵守することは必須です。ここでは、ルールに適合した上で、いかに安定したストロークを実現するかを解説します。
アンカリング(固定)禁止ルールの重要ポイント
アンカリング規制の核心は、「クラブ、あるいはクラブを握っている手が、直接または間接的に体に触れて、支点を作ってはならない」という点です。具体的には、グリップエンドを胸や顎、お腹に押し当てる行為は違反となります。また、前腕(手首から肘まで)を体に密着させて支点を作ることも禁止されています。
ただし、服の上から手が触れる程度であれば問題ありませんが、「意図的に押し当てて固定する」ことはルール違反とみなされます。このルール変更により、多くの選手が長尺パターを諦めましたが、一方で「アンカリングしない長尺の打ち方」を確立し、以前よりも好成績を収めている選手もいます。
ルールを正しく守るためには、パターと体の間に「明確な隙間」を作ることが推奨されます。審判や同伴競技者から見て、どこにも触れていないことが分かるように構えることが、トラブルを避けるためにも重要です。
体に触れさせずに支点を作る技術
体に触れずに安定した支点を作るためには、上半身の筋肉、特に「体幹」を活用する必要があります。左手を空中で固定する際、腕だけの力で支えようとすると、どうしても細かな震えが生じてしまいます。そこで、左肩の肩甲骨を少し下げ、背中の筋肉で腕を支えるような意識を持ちましょう。
また、左手首をしっかりと固める(ロックする)ことも大切です。手首がぐらついてしまうと支点としての機能が失われるため、左手首の角度を変えずに維持する練習を繰り返しましょう。空中で支点を安定させるのは最初は難しいですが、慣れてくれば体全体を使ってパターをコントロールできるようになります。
視覚的なテクニックとして、自分の首の付け根あたりを仮想の支点とし、そこからパターが吊り下げられているイメージを持つのも有効です。実体としての固定は行わず、イメージの中で支点を作り出すことで、スムーズな振り子運動が可能になります。
振り子のように動かす肩の回転の意識
長尺パターの理想的なストロークは、まさに「振り子」です。ヘッドの重さを利用して、自然な重力加速度でボールを打つのが基本です。この時、動かすのは手ではなく、「両肩の上下運動」であるべきです。左肩が上がればヘッドはバックスイング側に動き、右肩が上がれば(左肩が下がれば)フォロースルー側に動きます。
この肩の動きを中心としたストロークを行うことで、フェースの向きが変わりにくい「スクエアな軌道」を維持しやすくなります。長尺パターはその長さゆえに、フェースが一度開いたり閉じたりすると、そのズレが大きくなりやすい性質があります。肩で打つ意識を徹底することで、このリスクを最小限に抑えられます。
ストロークのテンポも重要です。「イチ、ニ」のリズムを刻み、バックスイングとフォロースルーの大きさを左右対称にすることを心がけましょう。ヘッドが勝手に動いてくれる感覚を掴むことができれば、アンカリングをしていなくても驚くほど正確なパッティングが可能になります。
距離感と方向性を磨く長尺パターの練習メニュー

長尺パターの打ち方を理解したら、次は実践的な練習で感覚を養いましょう。通常のパターとは距離感の出し方が異なるため、特化したドリルを行うことがスコアアップの近道です。
振り幅だけで距離を打ち分けるドリル
長尺パターの強みは、その重さによる安定したリズムです。この特性を活かすために、「インパクトの強さ」ではなく「振り幅の大きさ」で距離を打ち分ける練習を行いましょう。まず、平坦なグリーンで、自分の靴の外側から外側までの振り幅で打った時に何歩転がるかを確認します。
次に、膝から膝、腰から腰といった具合に、振り幅を段階的に大きくしていき、それぞれの到達距離をデータとして自分の中に蓄積します。このとき、ダウンスイングで力を加えて加速させたり、逆に緩めたりしないよう注意してください。重力に任せてヘッドを落とすだけの感覚で打つのがコツです。
このように振り幅と距離の関係を定型化しておくことで、実際のラウンドで「ここは腰から腰の振り幅だな」と客観的に判断できるようになります。これはプレッシャーのかかる場面で、勘に頼りすぎない確実なパッティングを支える強力な武器となります。
正確な芯(スイートスポット)で打つための練習
長尺パターはヘッドが大きく慣性モーメントが高いモデルが多いですが、それでも芯を外すと距離感や方向性が狂います。特にシャフトが長いため、わずかな手の動きがヘッド先端では大きなズレとなって現れます。芯で捉える感覚を養うには、フェース面に工夫を凝らした練習が効果的です。
簡単な練習法として、パターの芯の両サイドに輪ゴムを巻いたり、ティーを2本立てた間を通したりする「ゲートドリル」があります。このゲートに当たらないようにストロークを繰り返すことで、常に一定の軌道で芯に当てる技術が身につきます。
芯で捉えた時の打感と音を耳と手で覚えることも大切です。芯で打てたボールは、転がりがスムーズで芝の抵抗に負けません。自宅のパターマットでも良いので、目を閉じて打ち、打感だけで芯に当たったかどうかを当てる練習をしてみてください。感覚が研ぎ澄まされ、現場でのミスヒットが激減します。
プレッシャーのかかるショートパットの克服法
長尺パターを導入する最大の目的がショートパットの克服という方も多いでしょう。1.5メートル以内のパットを確実に決めるためには、「フェースを目標に対して正確にセットし、そのまま動かさない」という練習が必要です。長尺パターは直立に近い姿勢でラインが見やすいため、この利点を最大限に活かします。
練習では、カップを狙うのではなく、30センチ先に置いたスパット(目印)の上を通す練習を繰り返しましょう。長尺パターは短い距離でもヘッドの重みでスムーズに出せるため、手先で操作しようとしないことが重要です。支点である左手を意識し、肩の小さな揺れだけでボールを送り出す感覚を掴んでください。
また、わざと「外してはいけない」というプレッシャーを自分にかけながら練習することも効果的です。連続で10回入れるまで終わらないといったドリルは、実戦での緊張感に近い状態で打つ練習になります。長尺パターの安定性を信じ、機械的にストロークする自信を育みましょう。
| 練習内容 | 目的 | 意識するポイント |
|---|---|---|
| 振り幅ドリル | 距離感の安定 | インパクトで力を加減しない |
| ゲートドリル | ミート率の向上 | 芯の両サイドの隙間を意識する |
| スパット通し | 方向性の確立 | 30cm先の目印に集中する |
長尺パターの打ち方を身につけてスコアアップを目指すまとめ
長尺パターの打ち方は、通常のパターとは一線を画す独特な技術ですが、その基本を忠実に守れば、あらゆるゴルファーにとって強力な武器となります。最も大切なのは、「安定した支点を作り、ヘッドの重みを利用した振り子運動を徹底すること」です。これにより、手先の動きに頼らない再現性の高いストロークが可能になります。
現在のアンカリング規制を正しく理解し、体に触れさせない空中の支点をマスターすることも欠かせません。背筋を伸ばした高い視点からのアドレスは、ライン読みの精度を高め、腰への負担も軽減してくれます。イップスに悩んでいる方や、ロングパットの距離感が合わない方は、この記事で紹介した構え方や練習法をぜひ試してみてください。
パッティングが変われば、ゴルフ全体の流れが良くなります。長尺パターという選択肢を自分のものにして、次回のラウンドでは自信に満ちたパッティングでスコアアップを実現しましょう。日々の少しずつの練習が、グリーン上での大きな成果となって返ってくるはずです。





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